積ん読をやめたい

学習性無力感に抗いたい

新・宇宙戦略概論(初版) 3章を読み終えた

 

タイトル通り,新・宇宙戦略概論 の3章を読み終えたので記録する.

 

今までの記事を2人の知人に見せたところ,昨日の記事は,本の内容が分からなくても一応読めると言われたので,同じ体裁で書くことにした.

 

 

あまり触れていなかったが,この本は2017年に発行されたものであり,日々進歩する宇宙開発の現状からどのくらい乖離しているのかは精査する必要があると思っている.しかし,そこまですると永遠に積読状態になりそうなのでひとまずこの本での理解にとどめておくこととする.

 

  • 計測

かかった時間:3:30(計:10:04)

ページ数  :35p(計:102p)

 

単純計算,1hに約10pほど読んでいるようだ.

マイペースに頑張りたい.

 

  • 雑記

2章の内容まとめ

 日本における宇宙開発は,GHQの指示により約7年間の空白が生まれた.その後の朝鮮戦争を皮切りに再び開発が再開される.米国との技術協力もありながら今日まで成長を続け,他国に比べ遅れていた分を挽回し,世界の宇宙産業としても,米国.欧州に次いでリードしているという現状に至った.

 

 宇宙開発を再開する中で,政策については「科学技術の向上」に力を入れ続けた為に,政策の偏向が指摘されるようになる(後述).米国と技術協力する条件に含まれる「非軍事利用」による過去の制約は,安全保障とは一線を画した研究開発を引き起こし,その際生まれた歪が現代にも影響を与えている.

 

 米国との協力もありロケットや衛星の打ち上げが次々成功していく中,次第に独自の技術によるロケット開発も行われるようになる.独自の開発として,先進的な液体水素/液体酸素を使用したエンジン技術開発が行われた.だが,失敗が続き,風当たりが一層強くなってしまう.

 

 その他にも,日米衛星調合合意により,通信衛星放送衛星を国際調達するようになり,国内での需要が減少する.また,米国企業から仮契約を取っていた,30機の衛星打ち上げの契約解除などが続き,宇宙開発全体が苦境に立たされることとなった.

 

 厳しい状況が続く中,1990年代後半より,日本の宇宙開発にかかわる国家の体制不備を指摘する声が多く上がるようになる.主に「宇宙開発の研究/開発への偏重」「宇宙利用/産業での遅れ」「安全保障面での宇宙利用」「宇宙政策を推進する国家体制の不備」などが挙げられた.

 

 上記を踏まえ,様々な遍歴を経て2008年に「宇宙基本法」が制定されるに至った.

 

 

自分なりにまとめた部分も結構あるので,個人メモ程度.

 

前の記事↓ 

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3章「日本の宇宙産業」

3-1 我が国の宇宙利用

 この節では,具体的な宇宙産業について触れられている.

 再三出現した「宇宙利用」とはどのようなものか.筆者は以下の5分野を挙げている.

  1. 観測地点としての宇宙
  2. 中継地点としての宇宙
  3. 宇宙としての宇宙
  4. 産業波及としての宇宙
  5. 安全保障としての宇宙

詳細はp.79-80に表としてまとめられている.自分は,この表が大変分かりやすく感じた.

 

 実際に宇宙利用が進んでいるものとして,”観測地点としての宇宙”に分類される「衛星測位(測位,GPS,携帯地図情報など)」,”中継地点としての宇宙”に分類される「衛星通信放送(スカパー,航空,遠隔医療など)」,”産業波及としての宇宙”に分類される「民生用宇宙機器(BSテレビ,カーナビ,GPS携帯など)」の3項目を挙げている.

 

 そして,上記5分野の中で,もっとも宇宙利用が進んでいないのが”安全保障としての宇宙”としている.

 この中には,ミサイル監視などの防衛行為や,地震/津波などの災害監視などが含まれており,難易度の高さが伺える.

 

 日本の宇宙利用ビジネスとして,やはり衛星を用いた電波の広域利用が多い印象を持った.例として8つほど具体例が挙げられているが,その中でも,宇宙へ持っていき,無事帰還した酵母を使った「土佐宇宙酒」が異彩を放っていて面白い.

 そういえば,日本科学未来館で「宇宙グミキャンディー」を購入して食べたことがある.ヨーグルトをソーダで割ったような優しい甘さでとてもおいしかった.(こうしてお金を落とす人がいる時点でビジネスだなと思う.)

 

3-2 宇宙産業の動向

 宇宙産業は宇宙機器産業」「宇宙利用サービス産業」「宇宙関連民生機器産業」「ユーザ産業群」*1の4つの階層からなっている.

 

 宇宙産業の特徴についてはp.83の表にまとめられている.すべて引用で書くわけにもいかないので,大きくまとめると,他産業に見られないものが多い.特に,インフラ産業や観測,宇宙空間という特殊な環境での産業活動などが挙げられている.

 

 宇宙産業の現状についても同ページに記載されているが,宇宙インフラがあまり発達していないように見受けられた.

 

 現状,宇宙産業は民間企業の参入が少なく,あまり活性化しているとは言えない.対策として,衛星やロケットのコストを安くする,無償の設備・試験用データの提供,JAXAなどによる技術支援も行っているようだ.

 また,海外システムメーカーの下請けなどから受注拡大をする戦略も組まれている.

 

 筆者は「民生技術の活用と要素技術の開発」について,以下のように記載している.

日本版DARPA的な失敗を恐れない組織を設立し,安全保障/産業振興のための要素技術開発を行う。

ここについては少し思うことがある.2章で歴史を振り返ってみると,相次ぐ失敗による予算削減や商業的損失などに触れている.これを踏まえてなお失敗を恐れない組織の設立,というのは少し気になった.これは米国の国力が高いからこそ成せることでもあるのではないか.日本の国力でどのように賄うかというのは非常に難しい問題なのではないかと感じた.

 

3-3 世界を制する宇宙技術の獲得

 冒頭で, 日本の保有する宇宙技術はなにか今後獲得すべき重要技術はなにか,というのを整理して重点的に投資する必要があると筆者は述べている.

 他国では,すでにある汎用技術を組み合わせて,コストパフォーマンスを抑えながら技術開発を行っている.すでに持っている技術,今後獲得すべき技術をおさえておくことで,国際競争力を強化する必要がある.

 

 現状の日本が保有する技術・獲得すべき技術については,p.86後半 - p.94に渡って記載されている.保有している技術については分かりづらい部分が多いが,必要な技術として分野ごと確認する分には簡潔にまとめられていると感じた.

 

3-4 世界の宇宙開発最前線

  この節では,各国の宇宙開発実績などを紹介している.

 

 中国では,次期有人飛行船の実験機の打ち上げが成功しており,国内の有人飛行計画が進んでいるようだ.その他大型ロケット,新型ロケットの打ち上げなど,着々と宇宙開発が進んでいる.

 

 北朝鮮では,短いスパンで弾道ミサイルの発射実験が行われている.2009年以降はIMOやICAOに発射の事前通告を行っているようだが,日本を含む周辺国では,弾道ミサイル発射実験と見なし警戒している.

 

 ロシアでは,アラガンロケットの打ち上げや,新規宇宙基地の建設などによりさらなる自立性を高めている.

 

 その他,欧州,米国でも宇宙開発が進んでおり,とくに米国では巨額の開発費用を投じ,火星の有人探査計画の準備を進めている.

 

雑感

 宇宙産業について,特に具体的に書かれている章だった.国際競争に身を投じる戦略については,コンパクトにまとめられている印象を受けた.

 

 企業がそれぞれの分野でどのようなサービスを行っているかがわかりやすかった.

例えば,ドミノピザの追跡サービスや衛星放送などはなじみ深いが,逆に宇宙空間での人工オパール開発は聞いたことがなく,こういったこともしているのかと関心を持った.

 

 戦略的な取り組みが,企業における考え方と同じように感じた.他国ではどのような戦略を立てているのかが気になる.独自開発が上手くいっているところではアイディアが大切だろうし,日本のように他国に後れを取っているところでは,技術の向上のほかに,国内/国外での需要の拡大が大切だろうし,私には非常に難しいことのように感じてしまう.

 

 3章では表が多く活用されており,筆者が文中で述べている内容についての理解が深まった.

 

 全体的に面白い話が多く,宇宙産業と言われたときにどのようなものがあるか,というところが想像しやすくなった. 

 

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